小説・アニメ・コミック・ゲーム等、様々な創作媒体についての感想やら何やら、あるいは、永遠に敗北者な日常と思考
No.28
2009/09/01 (Tue) 00:11:28
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「オレはね、ささやかに生きて死ねれば、それでいいんだ。特別なものは何も望んでいない」
■鏡征爾氏の『白の断章』を読了。流水大賞初の受賞作。リードが些か誇張のような。座談会で、浦賀和宏氏の影響があるように言われていたけれど、そのようには感じなかった。ノワールな感性と言われても、『記号を喰う魔女』には及ばない。座談会で、浦賀氏の名前を出されたのがマイナスに影響してしまったのかもしれない。
少年と少女の物語。心臓を移植された少女は、かつての持ち主の記憶を持ち、犯されて殺された悪夢を殺すため、改造スタンガンを持ち、犯人たちに復讐を続ける。その現場を目撃したのが、とある事件によってサッカー部を辞め、嫌な記憶を忘れようとしても、忘れることのできない高校生の少年。しかし、滝本竜彦氏の『ネガティブ・ハッピー・チェーンソーエッジ』のように、ふたりで一緒にチェーンソー男と戦おう、という展開にはならない。
少女は復讐を目的としているけれど、持ち主の記憶など、少年にとっては信じにくいものであるし、スタンガンを武器に街をうろつく少女と関わりたくはない。成り行き上、少年が少女を助けることが何度かあるものの、少年は少年で、本当はサッカーを続けたいのに、それができない状況に鬱々とした毎日を過ごしている。自分のことで手一杯なのだ。目的の違うふたりの物語を、どのように繋げるのかと思ったのだが、ミステリという形で決着を付けている。
リードではまったく触れられていないけれど、本作は、青春ミステリである(売り方間違えてないですか)。従来のミステリのように、探偵役が犯人を指摘して謎解きを始める、といった形ではなく、少年が過去の記憶を克服していく過程で、真相が徐々に解ってくるという展開がたまらない。読み返してみると、真相に至る情報は、きちんと提示されている。本編、「青の欄外」を、「電子の泡」という7年後の物語の前編と後編で挟むといった構成。しかし、7年後で囲った仕掛けは解りにくい。百合の色という意味掛けか、という想像はつくものの、解答は記されていない。
惹句にミステリの文字を入れなかったのは、あくまで文学として売りたい、ということだったのだろうか。はっきり言って、本作の文章は固く説明が多いし、サッカーに関する知識や情報が圧倒的で、とても高校生の一人称とは思えない。それでいてコメディのようなやり取りがたまにあり、どうにもちぐはぐに感じる。この文体なりのユーモアの書き方というのがあるだろうに。ちぐはぐというのなら、ヒロインの少女がスタンガンを持って戦う女の子らしくない雰囲気と、それ以外のやけに女の子らしい振る舞いにも、多少の違和感があった。妙な形で、ライトノベル要素を入れているような。仮に、本作が天原聖海氏の『ファイナリスト/M』と同時期に投稿されていたとしても、流水大賞がミステリの賞ではない以上、やはり、大賞はこちらだったと思う。
表紙イラストというかカバーイラストというか、鏡征爾氏本人が描かれていたことに驚いた。『パンドラVol.3』での刊行告知でも、本人がイラストを描かれており、それも収録されるのだろうと思っていたけれど、イラストの収録はなし。また、ここでの告知ではXXXに、聖十字学園というルビが振ってあったのだが、本作では表記されていなかった。どうでも良いけれど、ビブスという言葉を久し振りに聞いた。僕も×岡にいたころは、サッカーをやっていたような。
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キタヤマ
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初めまして。ミズサワです。あの「失われた」90年代に、10代の総てを消費しました。
ミジンコライフ継続中。
ミズサワの3分1は「さだまさし氏の曲」で、3分の1は「御嶽山百草丸」で、残りの3分の1は「××××」で構成されています。
小説・コミック・アニメ・ゲーム・等、媒体に拘わらず、あらゆる物語を好みます。付き合いが長いのは「新本格」作品。卒業論文も「新本格」。論理性よりも、意外性を重視。
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