小説・アニメ・コミック・ゲーム等、様々な創作媒体についての感想やら何やら、あるいは、永遠に敗北者な日常と思考
No.352
2009/07/21 (Tue) 00:02:06
ファイナリスト/M (講談社BOX) 講談社 2009-05-08 売り上げランキング : 323485 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「じゃあ、僕はどうしたら良いわけ?」
「あんたにできることなんて、特に、何も無いんじゃない?」
■天原聖海氏の『ファイナリスト/M』を読了。原稿が届いてから1年半、座談会から1年以上が経過。この作品のための、単独での座談会も開催され、2008年冬発売だったものが、半年ほど延びて、ようやくの発売。待ちに待った作品だったので、1890円という価格に唸ったものの、やはり購入。
「小説以外」
予想はしていたけれど、やたら分厚い。応募当時で、原稿用紙1577枚だったそうで、この厚さになるのは納得。文字数を計算したら、1700枚を超えていた。その分、値段が高くなる訳だけど。ちなみに、清涼院流水氏の『コズミック』、辻村深月氏の『冷たい校舎の時は止まる』が、それぞれ約1400枚。本作は、その分量のせいか、講談社BOXでは、行数も文字数ももっとも多く、紙も薄いものを使用している。分量は多いけれど、『コズミック』よりはコンパクト。
表紙イラストは、本編主人公の二ノ宮鷹史と人工知能付きパソコン、メルクリウス。裏表紙の人物が、最初は誰だか解らなかった。二ノ宮鳩子の髪飾りが鳩なのは、突っ込みどころかもしれない。
「D-Iグランプリ 1回戦~4回戦」
D-I GRAND-PRIX、日本最強頭脳、名探偵決定戦。探偵日本一を決めるトーナメントテレビ番組に出場することになった、二ノ宮鷹史19歳無職は、AI搭載パソコンメリクリウスの助けを借りて、探偵日本一を目指す、というのが大雑把な粗筋。
サイト上で行われた、1次予選、2次予選通過者、507名が日本武道館に集まり、D-Iグランプリが始まる。1回戦は、持ち込み可能なペーパテスト。メルクリウスを用い、二ノ宮くんはトップで通過。2回戦は、コンピュータを利用した「変則ポーカー」。これはのちに、犯罪捜査の手順を記号化したもの、という解答が鳩子から語られるのだけど、二ノ宮くん自身は、そんなことに気づきもしないので、運良く勝ったという印象が否めない。ルールは結構練ってあったので、もう少し深く書くこともできただろうに、あっさりと書いている。
3回戦の「七つ墓村推理コンペ」、奥多摩山中に用意された、連続殺人事件が発生した村。事件の資料と現場の遺留品から、犯人候補の中にいる犯人を指摘するというもの。ただし、この事件で二ノ宮くんが敗退してしまうので、事件の詳細は語られない。そして、敗者復活入れ替え戦「暗闇でドッキリ! ハイド・アンド・シーク」に繋がり、二ノ宮くんは4回戦に出場できることになるのだが、ここまで推理の要素がほとんどない。ミステリでもない。この展開は、面白くないだろう、と思い始めていた。
4回戦の「六時間耐久・バトルロイヤル鬼ごっこ」、東京23区内に散らばった、4チーム8人によるサバイバルゲームという設定に、ようやく面白さを感じ始めた。『スパイラル』の歩と理緒の再戦のように、白熱した勝負を期待していたのだけれど。これは、鳩子やその友人の桐子が言うように、拍子抜けの結末で、つまらない。これほど魅力的なゲーム設定を作っておいて、なんでこのような扱いにしてしまうのか。二ノ宮くんは、同じチームになった、私立探偵の斯波斗志希とお茶をして、あとは逃げ続けるだけだったし。
単独座談会では、「1回戦から4回戦も熱量を持って書かれている」とあって、それはまあ、一定の水準を維持してはいるけれど、ちょっと予想とは違っていた。「純粋な推理小説ならば、孤島での殺人事件以降だけで成立する」とも言われていたので、まだ、推理小説展開には至らないのだろうけど、面白いと思える要素がほとんどなかったのが残念。1回戦~4回戦、目次でいうと第1章までで、文庫本1冊分もあったのに。
というか、感想として書きたいことは、まだ何も書いていないのに、ここまでの長さになってしまった。決勝戦、孤島での連続殺人事件の感想は、また後日。
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キタヤマ
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初めまして。ミズサワです。あの「失われた」90年代に、10代の総てを消費しました。
ミジンコライフ継続中。
ミズサワの3分1は「さだまさし氏の曲」で、3分の1は「御嶽山百草丸」で、残りの3分の1は「××××」で構成されています。
小説・コミック・アニメ・ゲーム・等、媒体に拘わらず、あらゆる物語を好みます。付き合いが長いのは「新本格」作品。卒業論文も「新本格」。論理性よりも、意外性を重視。
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